読める日の停車駅

千を超える蔵書を少しづつ少しづつ読んでいます。読んではいるものの、元来読んだ内容を忘れやすいので、内容や雑感を記しています。誰かに見て頂いている態で書くのは大変おこがましいので、淡々と記録のような書き方をすることもあります。

2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

寂寥感溢れるひと夏の悲しさ「悲しみよ こんにちは」F・サガン

多分読書会の選書にならなければ手に取ることがなかったであろう本書。いつも背表紙を見ても気に留めることなかった一冊が、こうして読まれるようになること、そしてこれまで知らなかったり関心がなかった作品を読むことによりる新たな発見、読書観の変化も…

悲哀漂うユーモア番頭物語「駅前旅館」井伏鱒二

昨日までのお盆三連休、いつも以上の飲食に体重の跳ね返りを気にしつつも、最近誕生した新しい命の温もりを胸に抱き、我が子の時はどうだったかなと思い浮かべつつ、家族皆の笑顔を少しむこうから眺め、わたし自身もここに居る幸せを感じる。 そんなささやか…

穏やかでやさしい隠れたSFの名作「ベティアンよ帰れ」クリス・ネヴィル

休日の穏やかな晴れた朝に読むのがよく合う本書クリス・ネヴィル著「ベティアンよ帰れ」。今朝読み終えた感銘の焔が消えないうちにこちらに綴りたいと思う。 かつてはダニエル・キイスの名作「アルジャーノンに花束を」と軒を連ねていたもののようであったが…

青年時代をめぐる回想「お菓子と麦酒」モーム

イギリスが誇る文豪の一人といえば、サマセット・モームが挙げられるのではないだろうか。 以前からモームは知っているものの著者の作品にまだ触れたことなかったのであるが、この「お菓子と麦酒」というタイトルに惹かれ、昨年末に購入してからというものし…

華麗なる翻弄「血の収穫」ハメット

かつて推理小説にハードボイルドスタイルを確立した偉大な米国作家ダシール・ハメットの傑作のひとつ「血の収穫」について綴りたいと思う。 講談社文庫S53.4.15 1刷ちなみに本作は複数翻訳されており、自分なりのリサーチの結果、翻訳内容・カバー画のインパ…

「ジョーズ」ピーター・ベンチリー

照付ける陽射しと青空、碧く煌めく海面、仄暗い水中、静かに忍び寄る三角の背びれ...「夏」と「海」で連想される映画と言えば、海洋スリラーの金字塔スピルバーグ監督の「ジョーズ」 が最もよく浮かんでくるのではないだろうか。 なお、この映画「ジョーズ」…

「ペスト」デフォー

あるサイトの紹介で、カミュの「ペスト」と表題を同じくする小説「ペスト」が存在することを知ったのが、本書を入手するきっかけであった。カミュの「ペスト」を読み、疫病に立向かう人々の姿と、そこはかとなく漂う類まれなる文学性に感銘を受け、いずれ併…

趣味のしおりづくり

読書の他に最近少しハマっている趣味の端くれ。 自分用栞づくり お気に入りの本の表紙やジャケットを使っているので、あくまで自分用として使用するだけ。まずはセリア材料製 こちらのセルフラミネートは若干硬めで、より熱接着ラミネートに近い仕上がり。続…

「トリフィド時代」ジョン・ウィンダム

文化が...開発が...生産が...農耕が...実生活を取巻くあらゆる環境が突如崩壊したら一体どうなるだろう。 まず本作の主題になっている「トリフィド」との邂逅は、およそ30年前私がまだ小学生のときに好んで持っていた「怪獣もの知り大百科(ケイブンシャ)」…

「老人と海」ヘミングウェイ

先ほど読み終えたばかりのアーネスト・ヘミングウェイの名作のひとつである「老人と海」について綴りたいと思う。 今回どうせ読むのであればと、素人ながら本格志向になってしまいこちらの装幀で揃えた。青い海と容赦なく照りつけ海面に反射する日光、握られ…

「廿日鼠と人間」スタインベック

今回は以前読んだジョン・スタインベックの代表作のひとつ「廿日鼠と人間」について綴りたいと思う。 角川文庫S35.6.10初版、杉木喬 訳 わたしが参加させていただいている読書会の課題図書になった際、個性を出してみたくて選んだのがこちらである。「廿日鼠…

読書観について真面目に思うこと

随分ブログをほったらかしにしていた。 年単位で放置してしまっていた。 その間も本への傾倒は続いており、趣向も緩やかに変化していった。 積む本も緩やかに増えていった。 遅読傾向は相変わらずのところで、メルヴィルの「白鯨」読破に四苦八苦した挙げ句…

「虹の彼方に」高橋源一郎

過去に読んだ「ジョン・レノン対火星人」や「さようなら、ギャングたち」で既に耐性と予想はついていながらも、相変わらずの筋書きのないハチャメチャ振りに、読書中何度も放り出そうと考えた本作。 何とも可愛らしいイラストで飾られた表紙。「虹の彼方に」…

「深夜プラス1」ギャビン・ライアル

今年の上半期わたしが読んだ小説の中でも最も面白い作品と言えると思う。まず、「深夜プラス1」という印象的で意味深なタイトルに惹かれ購入に至ったのも正直なところである。あわせてこの味のあるカバー画。この作品を敢えて手短に表すのであればわたしはこ…

「宇宙戦争」H.G.ウエルズ

先入観では蛸のような姿の火星人(火星人と言えば)との闘いを想像した。しかしこの作品は一人の男の回想から紡ぎ出される。それは異星人の侵略と脅威の中生き抜いた男の壮絶で哲学的な話であった。 写真は東京創元社の文庫1978年8月25日発行 11刷現在この装幀…