読める日の停車駅

千を超える蔵書を少しづつ少しづつ読んでいます。読んではいるものの、元来読んだ内容を忘れやすいので、内容や雑感を記しています。誰かに見て頂いている態で書くのは大変おこがましいので、淡々と記録のような書き方をすることもあります。

ヘミングウェイ「白い象のような丘」にある、男女の修羅場の向こうに仰ぐ雄大な山なみはどんな風景だったのか想像する

 スペインの駅の酒場で列車を待つ、ある男女の会話を切り取ったヘミングウェイの有名な短篇は、私の持っている作品集「キリマンジャロの雪(瀧口訳)」では、タイトルが「白い象のような丘」であり、よく目にする方のタイトルは「白い象のような山並み」である。

彼女の妊娠の話から徐々に緊迫しつつある二人の会話の中、ふと彼女が言った白い象のような遠くの山並みは、話のせせこましさと対象的にどのように映っていたのか。

こちらは私がとある山並みの風景を撮影したものであるが、恐らくもっと澄みきって美しい眺めだったに違いない。

一方で彼は彼女にひたすら堕胎を勧めるのであるが、明らかに彼女に分があるように思える。
以前から持ち上がっていた話の続きなのか、落ち着いている風を装い、明らかに彼は狼狽している。

しかし読み手は彼等の会話から雰囲気を読み取るのであって、決して妊娠・堕胎を明文化していないところが作者の妙である。