本とは様々な出会いがある。
一冊ゝの本に手にした時の思い出がある。
この作品もそのひとつである。
「春琴抄」谷崎潤一郎著
初めて読んだのは三年前の文庫版。
その当時は、句読点のない読み難さに、もう読むことはないだろうと思っていたもの。
時が経てば不思議なもので、当時の風合いで読み直したく、初版本を追い求めるようになっている。
恐らく自分史上四回目ぐらいに接戦の末競り勝ったもの。
黒く美しい漆塗の装丁に金文字(大分掠れているが)で、燦然と綴られた『春琴抄』の三文字。
昭和初期の文章も趣があり、とても麗しい。
琴と佐助、二人の仲ように私の本棚を美しく飾ってくれることだろう。