テグジュペリの「夜間飛行」の主役リヴィエールに見る経営者の熱き魂とその哲学
テグジュペリの中編作品「夜間飛行」の主役、夜間郵便飛行の支配人リヴィエール。
彼は非常に冷徹で恐い。
これはあくまで下の立場から見たリヴィエールの姿であり、実際職場にこんな上司が居たとしたら、毎日背筋がすくむ思いであろう。
作中の彼は職員と職工との親密な関係にもメスを入れ、仕事でミスをした者は情け容赦なく即刻解雇する等、一切に妥協を赦さない。
荒天により、部下の飛行機が遭難し、死が目前に迫った際も最期の時まで冷静さを欠かさない。
一見鬼のような所業で、そこまでしないでもいいのでは?と感じられるが、それも一重に企業経営を背負っているからこそ、個人を殺し公の顔を示す、強く熱い責任感の現れなのであると感じる。
勿論、リヴィエール自身も葛藤し、毎回身を切る思いで決断する人間らしい姿も描かれており、事業の公平性のため、自分を最も犠牲にしている強靭な精神をここに学び取る事が出来る。
しかし一度公の立場になると、それをおくびにも出さない強い姿をみせる。
自分は企業の顔であり、自分の行動のひとつひとつが経営の善し悪しを左右する。
だから一切の妥協を見逃さず、常に経営に最適な決断を下す。
これを公と見るならば、これだけ筋が通った徹底ぶりが却って格好良く、なってほしくはない反面、理想上司像として思えてくる。
この文学作品ひとつを通読するだけでも、経営の精神を十分学び取る事が出来るのではないだろうか。