ワセダ三畳青春期に見る旧きよき清々しき青春
最近は何を読んでも読み疲れすることが多く、ライトに読めるものを間に挟もうと、以前から好きなジャンルであった紀行ものを主に手掛ける、高野秀行氏の私小説「ワセダ三畳青春期」を少し前から読んでいたのであります。
見事に期待どおりの内容で、ユニークなアパートの住人の面々や思わず微笑んでしまうようなエピソード。
まるで「めぞん一刻」のはじまりから終わりまでを読んでいるような感覚になりました。
自分自身もいつのまにかこの物語の中心である野々村荘の住人になったかのような感覚すら覚えるのであります。
この著者のような滑稽で粋な生き方も共感できます。
ラストに著者の高野さんが、野々村荘を出てからどうなったのか気になるところではありますが、あとがきまで読んで楽しかったのは久しぶりであります。
アパートを出るに至った心境が巧く表されています。
帰るべきところが「場所」から「人」へずれてきていると。
つまり心の拠りどころの話ですね。
他にも、自らの世界紀行を舞台にした作品もたくさんあるので後日是非読んでみたいと思います。