読める日の停車駅

千を超える蔵書を少しづつ少しづつ読んでいます。読んではいるものの、元来読んだ内容を忘れやすいので、内容や雑感を記しています。誰かに見て頂いている態で書くのは大変おこがましいので、淡々と記録のような書き方をすることもあります。

ジャン=フィリップ・トゥーサン「浴室」レビュー

久しぶりに一冊読めたのであります。

今回は、今月の読書会の課題図書として選書させていただいた「浴室」です。

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裏表紙のあらすじが興味をそそります。

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あらすじを読めば浴室を中心に物語が展開するように思えますが、実際は浴室に籠っているシーンはほんの少しです。

主人公自身アクティブではありません。どこか少し心が疲れている?ようです。

淡々と自分目線で語られる些細な言動の数々に、自分の殻から抜け出そうとする「ぼく」の苦悩も感じられる程です。

 

しかし、なぜ「ぼく」がそんなにすさんでいるかはよくわからないままです。

人間関係に疲れているのでしょうか。

パリでもどこでも、彼女が言おうと誰が言おうと、彼のマイペースっぷりはどこまでも続きます。


ナイーブなのか何なのか。

物事を俯瞰して見る主人公の様子は、少し性質が歪んでいるようにも思えます。

ただ漂うのは彼の果てのない空虚感です。


彼が起こす振る舞いの数々は、まるで「キャッチャー・イン・ザ・ライ」のホールデン青年を見ているようでありました。