金閣寺レヴュー
約二週かかってやっと読み終えたのが、この「金閣寺」であります。
美への執着と吃音の激しいコンプレックス、親友の死。師匠への嫌悪感。嫌悪感を抱いている母親から掛けられる過度の期待。
幼い頃から憧れていた金閣寺。
そして、美しいものを目の当たりにしたとき、覆い被さるように眼前に浮かび邪魔をする金閣寺。
金閣寺の魔力に憑かれた若き僧侶。
やがて、擦りきれつかれ果てた魂が抱いた崩れてゆく美へのイメージと、美への激しい憎悪。
すべてが思い込みでありながら、そこから生み出した答。
「金閣を燃やさなければならない」
これは、生きることへのフラストレーションの放出と自分の存在の証を残すための行い!?
金閣寺放火に至るまでの主人公の苦悩と犯行に及ぶまでの心理を、主人公の目線により刻々と語っております。
ラストは流石、純文学のテイストにより綺麗に締められており、主人公が生きようと思った決意は、実際の事件と異なっています。
これは著者から実際の主人公へのせめてもの心遣いにも思えるのであります。