読める日の停車駅

千を超える蔵書を少しづつ少しづつ読んでいます。読んではいるものの、元来読んだ内容を忘れやすいので、内容や雑感を記しています。誰かに見て頂いている態で書くのは大変おこがましいので、淡々と記録のような書き方をすることもあります。

潮騒

若く瑞々しく繊細である一方力強くさを感じるこの作品の文体は、近年の恋愛小説を凌駕するものを感じたのであります。

そして、テンポよい展開と清々しさを。
序盤は遠くで空々しく聞こえる潮騒が、穏やかに
変わってゆく美しい変化。
素朴で輝くような島の情景と、いきいきとした人達。それらの繊細な表現がすべての文章を活かしています。

そう。文が活きているのであります。

出来すぎたハッピーエンドは余り好きではありませんが、訪れるべくして訪れ、祝福に包まれた本作品のハッピーエンドは心から良かったなと思えるのであります。終わり方も、新治と初枝の今後が幸せでありますようにと願えるような。

初めて触れた三島文学。
他の作品も追々読んでみたくなりました。

潮騒 (新潮文庫)