読める日の停車駅

千を超える蔵書を少しづつ少しづつ読んでいます。読んではいるものの、元来読んだ内容を忘れやすいので、内容や雑感を記しています。誰かに見て頂いている態で書くのは大変おこがましいので、淡々と記録のような書き方をすることもあります。

筒井康隆「残像に口紅を」

久しぶりのレビューです。
およそ20日掛けやっと通読しました本作品。

私の好きな筒井康隆先生の作品なのですが、今回はSFとしても異色で、実験的な趣のある作品と感じました。

虚構の中で起こる音の消失。
音の消失に連れて消えていく物。消え行く人々。
訥々とした虚無感が訪れてきます。

最後は畳み掛けるような言葉遊びの応酬と虚構の瓦解。

当時の筆者は、この作品のあと暫く断筆することになったようですが、正にそれを予見させるような作風でありました。

作品を楽しめたというよりは、些か通俗的でない虚構世界の中で起こる出来事を、やっとの思いで通過したといった感じです。