ようやく安部公房の砂の女を読み終えました。
終始退廃的な雰囲気が漂う中にも、時代を感じさせない斬新さが伝わります。
そして文章一つ一つに無駄がなく哲学的。
昆虫採集に出掛けた男が、逆に砂の中にある家に閉じ込められ、見知らぬ女性と暮らすことを余儀なくされ、逃げることもできないなすすべもない不条理。
ラストにおいてはとても考えさせられるのであります。
すべてはじめから村民と女の計算ずくだったのではないかと思われるほど。
これまで幾ら努力しても得られなかった自由が、ひょんなことから自分次第となった瞬間。
生きていたら最もノーベル文学賞に近いと称された筆者のこの作品は、是非読んでみる傑作であります。