読める日の停車駅

千を超える蔵書を少しづつ少しづつ読んでいます。読んではいるものの、元来読んだ内容を忘れやすいので、内容や雑感を記しています。誰かに見て頂いている態で書くのは大変おこがましいので、淡々と記録のような書き方をすることもあります。

読書ノオト・カフカの「審判」第十章および未完の断章

第十章 結末

 ある日の夜9時頃、シルクハットの男二人がKの自宅を訪ねてくる。
Kはその男たちに両脇を固められながら、何処ともなく歩を進める。

途中橋の欄干から見える、かつてKが昼寝していた長閑な川のほとりの情景が、これまでの殺伐とした空気をすべて帳消しするかのように美しく、一層Kの最期の時を予兆させる巧みな表現に感じる。
そして、警官からの問いかけに逃れるように走るK。今までにないKの動き。

やがて石切場に着いたKは、二人の男たちに身ぐるみ剥がされ(男たちはそれぞれ役割分担が決まってなく、その場でまごつくところがカフカらしい表現)、一方はKの喉元に手を回し、一方は胸に肉切り包丁を振り下ろす。

処刑場の上の方から誰かが見える。まだ見ぬ最高裁判所の裁判官なのか…⁉

Kは“犬のようにくたばる!”という最期の言葉とともに、何も明らかにされないまま、正に犬死にを遂げる。

この不条理な物語には、作者が意図して削除したと思われる幾つかの断章がある。
恋人、母親、最初に登場したどうしようもない三人の銀行雇員など、およそこちらの方が本編のように理屈っぽくコセコセしたものが無く、凡そ小ざっぱりした小説らしい描きぶりであるのだが、訳者に未完と位置付けられている点で、サイドストーリー的な感がある。それもそこそこの文量が断章されている。
中でも、「検事」「支店長代理との戦い」が面白い。