読める日の停車駅

千を超える蔵書を少しづつ少しづつ読んでいます。読んではいるものの、元来読んだ内容を忘れやすいので、内容や雑感を記しています。誰かに見て頂いている態で書くのは大変おこがましいので、淡々と記録のような書き方をすることもあります。

世知辛い世の中の縮図を猫で再現した名作「猫の事務所」

宮沢賢治氏は、動物や自然を使った人間社会の表現が非常に巧みである。
f:id:bushi-hachi:20201127040741j:plain
写真はたてしな書房の宮沢賢治復刻版短編集「猫の事務所」より

登場するのはすべて猫であるが、そのまま人間社会の縮図と見ていいといえる。

仕事も周囲への気遣いも申し分ないのに、住んでいる環境や見た目・やっかみで、同僚から不遇な扱いを受ける"かま猫"がひとり悩み、人知れず涙を流す姿はとても不憫で心に訴えるものがある。

最後には救われた気持ちになるが、まず人権尊重できないものが社会の公器であらざるべからずということではないかと私は感じる。

人間社会でもよくあることであり、その中で自分はどうあるべきかと教えられる。