読める日の停車駅

千を超える蔵書を少しづつ少しづつ読んでいます。読んではいるものの、元来読んだ内容を忘れやすいので、内容や雑感を記しています。誰かに見て頂いている態で書くのは大変おこがましいので、淡々と記録のような書き方をすることもあります。

一夜だけの仲間。ホーソン「七人の風来坊」

ホーソンの短編集より「七人の風来坊」

一泊の雨宿りをと立ち寄った馬車小屋に、何かに導かれるように集った七人の紳士淑女の顔触れ。
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一晩だけの行きずりの仲間たちが、其々の持ち味を披露しながら、"野外集会"に参加するという行き当たりばったりの計画をぶち挙げ、この夜を愉快に踊り更ける。

個性ある面々に少々劣等感を覚えながらも、自分の立ち位置を得ようと何とか頑張るロマンチストな主人公がいじらしい。

結局夜宴の間に"野外集会"は終わっており、朝の光の中、一夜だけの仲間たちはそれぞれの方向へ解散してしまう。

主人公の「私」は、賑やかな楽士や占い師などではなく、中でも寡黙な土人の人と肩を並べて旅立つという如何にも主人公という性格を表した描写がまた趣がある。

初めての場所で、初めて合う顔触れと仲間意識を育みつつ、声の大きい者がその場の勢いで皆で○○やろうよ!と自分の意思とは別に強引に決まってしまうような、身近に経験ありそうで無いような感覚を愉しめる一作。