友情のような仄かな感情とお洒落で哀しいお別れ。ロング・グッド・バイ
仕事の昼休みにコツコツと苦節約一ヶ月
遅読のわたしにとって、とてもロングであった本作。
村上春樹氏がチャンドラーから大いに影響を受けていることが文体からよくわかります。
正にハードボイルドとはこのことなのだと感じます。
個性的な登場人物の面々、タフで洞察力鋭く、悪漢にも怯まず闘うマーロウ。そしてどこか哀愁漂わせ、謎を秘めた本作品のキーマンであるテリー・レノックス。
バーのカウンターでお酒屋を挟みながら交わす淡い友情にも似た感情。
居なくなったレノックスの意志を守り、もういない彼の分までコーヒーやギムレットを捧げ、友情の軌跡を偲ぶマーロウ。
なんてカッコよく、お洒落な男でしょうか。
人間描写がよく、ミステリー要素を大いに含んでいますが、真相究明をせっつく無味乾燥さが無く、土台のしっかりしたストーリーに引き込まれていきます。
ラスト近くのマーロウの言葉は、じわりと胸に響きます。
友情なのか縁なのかそれとも運命なのか、読後にマーロウとレノックスのような関係を羨ましく感じました。
このロンググッドバイで感じた長いお別れを意味するものは、マーロウとレノックスとの別れ、ミセスウェイドとレノックスの距離を隔たらせた戦争という長い時間と長い時間を経たお互いの心の距離感を表しているのではと、自分なりに解釈しています、
温かいブラックコーヒーとギムレットが無性に飲みたくなってきます。
ロング・グッドバイ (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-11)
- 作者:レイモンド・チャンドラー
- 発売日: 2010/09/09
- メディア: 文庫
- 作者:レイモンド・チャンドラー
- 発売日: 1976/04/01
- メディア: 文庫